楽しい石けん作りラボ

ダイソーのタッパーで石けん作りをしています

透明化、透明化ってどうしてこだわるの?

透明化、ジェル化と呼ぶのですよね?直訳すればゲル段階というのかな?

先の極小バッチ実験で見た通り、オイルと苛性ソーダ液を攪拌してトレース(石けん生地がモッタリした状態になり、混ぜると生地表面に跡が残る そのまま置いておくと時間が経てば自然に全体が石けんになる段階)を出した後生地を加温していくと、ある段階で透明になります。

 

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トレース 左はゆるめでライトトレース 右は普通

本や、ネットの情報によると、保温中に加温しなくても、発熱しやすい生地で条件が揃えば、保温中に型の中央部分から透明化するようです。

どちらも、鹸化反応 〜苛性ソーダがオイルと触れて石けん成分になる反応〜 がある程度進んだ状態、で起こるらしい。

オイルに苛性ソーダ液を入れるとソーダ液はオイルの下に沈んで2層に分離した状態になります。

 

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そのままだとお互いが触れ合うのは層の境界部分のみ。

つまりその部分でしか鹸化反応は起こらない。けれどかき混ぜるとオイルが細かい粒状になって接触面が増え、反応しやすくなります。

オイルと水の粒が小さくなればなるほどお互いが接触しあえる表面積が増えるので反応が早く進む、という事でしょうか。

それに加えて、

鹸化反応は生地の温度が高い方が反応スピードが速くなるようです。

鹸化反応時、石けん生地自体が発熱するので、さらに反応スピードが上がる、という具合に加速度的?に反応が進み、反応時間が短くなる、という状態らしいです。

 

私がなぜ、透明化を目指してやっているかというと、早く鹸化を終わらせて、なるべく早く使える石けんを作りたいからです。

 

手作り石鹸の一番ポピュラーな作り方は、型入れした生地を発泡スチロールの保温箱に入れて保温した後、1ヶ月ほど熟成させて完成させるコールドプロセス法(CP法)と呼ばれるものです。気温が下がる冬場などは箱にお湯を入れたペットボトルを入れたり、暖房器具の近くに置くなどして暖かいと感じるぐらいの保温もするようです。(石けんを作り始めて最初の30回ほどは、私もクーラーボックスでCP法でした)

保温箱で鹸化させて石けんにし、型出ししてカット、その後さらに約1ヶ月熟成(反応しきれなかったアルカリ成分をゆっくりよりマイルドなアルカリ成分に反応させる)する方法でも、技術的には数日で使用可能な石けんになっているそうです* Bramble Berry*

 

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ザックリ訳すと、「1ヶ月の熟成期間をお勧めするのは、余分な水分が乾燥してシャワーで使う時、溶けにくく、よりマイルドで長持ちする硬い石けんにるから。

なのでそれだけの期間は待つ価値が充分にある」とのこと。(どうもこちらの人はシャワー時、石けんを持って直接肌に擦りつけて使う人が多いらしい。このfew daysでできるというのも気になる

 

とはいえ。人によってレシピも違い、方法も色々で作られているため、反応が終わるのには速い、遅いの差があるでしょうから、安全に使える目安がだいたい1ヶ月、という事だと思います。 泡立て器で手混ぜで作るのとブレンダーで混ぜるのとでは油脂の混ざり具合が違うだろうし(マヨネーズを作る事を考えたら、ミキサーvs泡立て器の差は明らか)使う型の種類(木型、シリコン型、アクリル型、紙箱、プラスチックなど)形状で保温力も変わってきそうだし。

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石けんを作って、それが成功か失敗か、どんな出来かの結果がわかるのに1ヶ月もかかるなんて長すぎる!と思った私。

だって、ダメだった場合、1ヶ月後にようやく検証ができ、それから改良して〜という事じゃないですか。効率が悪すぎる。

と思った私はネットで見つけた他の方法を試してみることに。

加温して作ればすぐ使える、というのがウリの2つの方法です。

 

・ホットプロセス法(HP):スロークッカー、クロックポットと呼ばれる陶製の電気調理鍋で炊く方法(ちょうど使っていない手持ちがあったので、即、お試し クロックポットは固形オイルを量り入れたら勝手に溶けてくれるのでラクでした)

www.youtube.com

 

 

・オーブンプロセス法(OP):大鍋で生地を作り鍋をそのままオーブンに入れてホットプロセス法と同じように混ぜては保温、を続けて作る方法(どう考えてもモサモサ以外のものができそうにないと思ったのでスルー! 塩水を入れて生地の粘度を落とし、少しサラサラの生地にしているみたいだけど)

Hot Process Series: Oven Process Layers - Soap Queen

 

双方とも半透明なグリセリン状〜マッシュポテト状になった生地を型に詰め、冷めて固まったらハイ出来上がり。生地を70℃〜90℃で加熱させ、鹸化反応を一気に終わらせているのですぐ使っても問題無いレベルまでアルカリが下がっています。

 

私も最初の頃よく作っていましたが、どうしてもモサモサになってあまり魅力的な石けんができないのが難点。スロークッカーは名前の通りにゆっくり調理。朝、全ての材料を入れてスイッチを入れたら、夕方シチューができてる、みたいな。

弱火でコトコト長時間煮込む料理がお手軽にできるすぐれモノです。

一般的な設定温度は、Low 93℃、High 149℃らしく、石けん作りに使うと鍋肌についたままの生地はうっすら焦げるので、生地全体の温度を均一にさせるには混ぜ続けて熱ムラを無くさなければいけない。

でも混ぜると空気に触れる面が多くなるので水分がどんどん蒸発して、よりモサモサになる気がする。混ぜなかったら焦げる。。。

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一方で、クロックポットではなく大鍋で生地を作り、そのまま鍋をオーブンに入れてクロックポットの代わりに温めて同様に作る人も。オーブンの場合、クロックポットよりも低温での温度調整が可能なので混ぜなくても焦げる心配がなく、生地全体を透明にできる。

クロックポット同様に透明に出来上がった生地をヘラで混ぜて色や香り付けしたりして型詰め(流し込むのでなく詰め込む感じなので)して作るようになる。

それまでの石けん作りの常識では『攪拌』は不可欠だったので、とにかく混ぜなくては、という感じ?鍋が金属製なので熱が伝わりやすく鍋肌がやはり高温化するため?

でも、ちょっと待って。透明なワセリン状になったら出来上がり、という事は、オーブンで全体が透明になったらオッケーなのでは?

というような具合に、きっと誰かがヒラメキ、それなら型入れした型ごとあっためてしまえばできるハズだ!となったのでしょうか。

それがCPOP法。

 CPOP法という名前は普通の石けんの作り方「コールドプロセス」に「オーブンプロセス」をくっつけてできています。

普通の作り方で型入れした型ごと加温するので、いつも通りのスゥイル(流し模様)や各種デザインを施した石けんができます。

ただ、高温に弱い色材や香料は変色したり香りが消えたり、香料によっては茶色く色付いたり、反応が早まったり粒状に固まったりもします。普通のCP法に比べると透明感のある石けんになるので、発色が良くなり、色が濃いめに見えます。それまでと同じ色のものを作るにはいつもよりも色材の量を減らすなど多少調節がいるかもしれません。

型はポリプロピレンの他、シリコンでも、ジプロックバッグでも使えますが、シリコンの場合高温化しすぎると接触面に小さな泡ができます。

 

加温する方法は、生地の入った型をオーブンに入れて、所定の時間、所定の温度(ここが各人バラバラで決まっていなくて曖昧)で加温もしくは保温(加熱後に消したオーブンに入れて一晩っていう人もいる)して冷めたら出来上がり。

最近では Heating pad(筋肉痛用?サロンパスがわりに背中などを温めるためのコンセント付きの物体。上のBramble berryの写真に型の下に敷いてある白いバッグです)に型を乗せて毛布でくるむやり方も多いみたいですが、これはCP法?どうなんでしょう。

 

専門家によると鹸化反応をスムーズに短時間で終わらせるキモは透明化にある、ということなので、ビジュアル的にもわかりやすい透明化を目安にしています。

型の中の状態を見るために透明のタッパーを使い、しつこく透明化にこだわっているというわけです。

 

CPOP法でずっと作っている人はそれぞれが自分のベスト条件を持っているけれど、それはその人のレシピ、作り方、オーブンなど加熱機器の性質によるので各人が自分のベスト条件を探して作成しているのが現状だと思います。

 

私はオーブンはずっとつけた状態で型を入れているので、石けん作りではかなり高温で作っている部類。170°F=76.6667℃

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私の場合、透明化はいつも外側から始まり、中央が一番最後です。

何度かオーブンを覗いて、まだかな〜とチェックする時も、最後は型を出して底を覗きます。(ただ色材によって不透明になってしまうものもあります。特にピグメント(顔料)を多く入れた場合は上の桜のように不透明になります。ソーセージ入りのコンソメスープのように見えますよね。。 2014の桜)

もっと低い温度での加温、もしくは保温で透明化する場合は、石けん自体が発熱して起こる透明化で、型の中央部分から始まります。

私はこちら(アメリカ)の一般的なレシピのように香料を大量投入せずにパウンドあたり1mlほどしか入れないし、熱を発するオプション(添加物)も滅多に入れません。さらに、色々凝った細工をしがちなので型入れに時間がかかり、生地が冷めきっている事が多く、透明化させるためには余計に高温が必要なのかもしれません。

というより、いつもオーブンで作るのでなんとなく自然に76℃加温作成に合ったレシピになっていた、という感じ。

私が感じているCPOP法の利点は

・ソーダ水とオイルの温度調整はあまり考えなくて良い

・冷めきった生地でも大丈夫(ハードオイルが多いレシピはトレースじゃなく、ただ冷めてオイルが固まっただけの場合があるのでちょっと注意)

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・凍らせた生地でもちゃんと石けんになる!

(だからどうする?と最初自分でも思ったけれど、実は結構使えそうな技なんです)

右の写真の中央列の2つは、型入れして型のまま一日冷凍し、翌日加温して作りました。(生地温度の比較実験の一部 preview)

 

 

透明化=鹸化が終わった=安全???

 

正しいレシピで、正確な計量、材料にも問題がなく、攪拌も十分であれば、透明化した時にはほとんどの苛性ソーダが反応済みらしいのですが、100%ではないそうです。

透明化している時はある程度の反応が終わり、できた石けん成分が結晶化しているけどまだゆるゆるで分子が動きやすくて一番鹸化が進みやすい状態、という風にとらえているので(単なる素人考え)、最後に残ったアルカリができるだけ反応するように透明化してすぐ急冷せず保温を続けています。加温ではなくあくまで保温。熱源は切ってゆっくり型の周りの温度が下がって行く感じ。(現在は実験も兼ねてゆっくり冷ます法を採用していますが、以前は急いで作りたくて急冷していた時期もありました。どちらがいいのか、また今後データをまとめたいです)

そういう訳で、極小バッチ実験の時に、生地が透明化してからも+アルファで加温を続けていたのです。 少量で冷めやすいので念を入れて長めに、ね。

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左から Sakura と Piano 共に 2016年4月 Chocolate cake 2018年1月 Charcoal mint 2018年6月  右端 酸化状態とpHチェック 右2つはまだキツめ5/17/2019撮影 

うっかり一部のオイルを入れ忘れて、苛性ソーダ量が過剰の時も透明化はするので、見た目は普通に綺麗な石けんができます。上の写真で左端の下のSakuraとPianoがそうで、オイル総量1040gの所、ココナツオイル100gを入れ忘れてそのまま作成。気付いた時には後の祭り。。現在もpH試験紙は青緑色。ちょっと高めのアルカリとなっていますが、手洗い用には普通に使えます。

(本当に長い間キレイなままでビックリ。過剰オイルがないとこうなるのか!と目から鱗  茶色く変色するのは酸化のせいばかりでなく、使用したフレグランスオイルの種類にもよります 特にバニラ系はダメですね

 

 

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こちらも2014の桔梗 ちょっと沢山必要で倍量できる大きなタッパーで作りました

 

鹸化が終わっていても、高温の状態が続けば透明なままです。(それがいつまで続くのかは確認していませんが)極小バッチ実験ではキャノーラ100%など、生地がかなり冷めてきても透明な石けんもありましたね。

湯煎で 加温したのに不透明だった謎石けんがいくつかあるので、その理由も調べてみたいです。白っぽくカリカリになったので何か別なものが生成されたのでは、と思います。(オーブンでは透明化しなかったという経験がなく、湯煎時だけなので多分温度条件が合わなかった)

 

前回までのマグを使った加温実験での通り、湯煎状態でも生地の場所によって熱かった部分とそうでなかった部分のpHに差があったので温度条件は大事だと思っています。

すぐ使える加温法とするには万能レシピとするならば70℃前後の温度が必要であると今は感じていますが、まだまだ謎が多く十分に解明するにはかなりの時間がかかりそうです。(すぐ使える、と言ってもやはり冷めてカットしてすぐはちょっとおすすめしないかな。水分が残っていて柔らかくて水に溶けやすいので、なくなるのが早くて勿体無い。泡立ちも乾燥したものに比べて少し悪い感じがするし。1ヶ月も待つ必要はないけれど数日は乾かした方がいいです。ラッピングするなら最低1〜2週間は乾かしています。乾燥が早いのはカラッとした南カリフォルニアならでは、かも。)

 

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   今後も気の向くまま、石けん作りに関する謎の追及に実験を続けていきます。

  次回は冷凍生地の所で触れた、生地温度変化のモニター実験を紹介する予定です。