以前、オイルごとの鹸化のしやすさを知りたくて、1種類のオイルだけで石けんを作る実験をしました。もともと、普段から75℃ぐらいのオーブンに入れて低温加熱し、透明化を鹸化終了の指標にして石けん作りをしていました。レシピによっては90分ですっかり透明になるものや、逆にたっぷり120分以上かかるものなどがありましたが、どれがどんな特性なのかは複数のオイルを使っているのではっきりとはわからず、興味がありました。
それぞれのオイルを同じ条件で作ったら、透明化するのにかかる時間と、その時の温度で鹸化のしやすさが比べられるのではないか、とずっと思っていました。
ただ、使いにくい石けんがたくさんできても勿体無いので、できるだけ少量で作れるように考え、容器や器具の都合から出来上がった石けんが50gぐらいのものを作りました。
これまで二期に渡って計19種類のオイルの石けんを作成し、データも取ったのですが、いかんせんどうしても作業にムラができてしまい温度条件などが結構バラついてしまいました。
結局、実際に比較したり、そのデータを応用で使うにはちょっと難ありの状態。
そこで、前回のデータを参考に、もう一度やり直すことにしました。
今回調べるのは16種類。
それぞれのオイル毎に透明化していく様子や、温度変化、所用時間などを見ていきます。
↑上の写真は、全体が透明化した時の様子。不飽和脂肪酸の割合(uki uki石けんライフさんデータ他を使用)が多い〜少ない順に並べました。(最後のひまし油は例外)
前回のデータを参考にしつつ、鹸化のしやすさは不飽和脂肪酸の含量による、という石けん界のセオリーに従ってオイルごとの不飽和脂肪酸含量%をグラフにし、多いもの(鹸化しにくくて時間がかかる)からテストしていきます。
★文字が小さくて見づらいですが、右側からスタート。ただしひまし油はラストにします
★一度でまとめるには量がありすぎたので、記事は8種類づつ2回に分けます
前回からの改良ポイント
温度計 湯煎中の温度変化は 赤外線温度計→金属端子差し込みタイプ(いつもの)
前回の結果で傾向がわかっているので、ある程度温度と時間が予測できてラクなのでは?という目論見。おなじみの生地に挿したまま測定できるモニター温度計を使います。
最近、設定温度を自分で変えられる事に気づき、早速使ってみました。
温度を設定して使用すると設定温度に達したら本体はアラームが鳴り、
スマホにはお知らせ画面が表示 表示温度も赤になる
ただ、温度設定の予想(これからピーク、の温度)が低すぎるとパーム核のようにグラフ画面でピークが画面上限を超えてしまい、見えない・・
まあ、データは温度画面をキャプチャーして取るので問題ないのですが。
上手くいくと他のように生地の状態が一目でわかり便利です。
グラフ機能は90分でリフレッシュされる為、4枚目のアーモンドは 90分の制限時間をオーバーしたため、リフレッシュされて初期の拡大表示に戻っています。さらに時間が経つと他と同じ縮尺に変わります。
サンプルを手早く同条件で鹸化させるために、ひと工夫。
生地量をより少なくして加温、鹸化を早め、観察もしやすくするために・・・
ミルクフォーマー ダイソーで購入(茶色いもの)
古い物はモーターと先部分が緩んでしまった様で、どうも性能が悪くなったと感じて新調。
新しい方は思いの外パワフルで今まで10分以上かかっていたサンプルも数分でトレースが出るのにはビックリ(生地量が少なくなったせいでもあるけれど)
太試験管 ポリプロピレン製の子供用実験器具(化学おもちゃ)をAmazonで購入
・直径1インチでスクリューキャップつき
・フタに穴を開けて温度モニターのプローブを刺せる!
これで温度チェックもバッチリ
・透明なので中身がよく見える
湯から出さなくてもある程度観察できる
サンプルが観察時に冷めるリスクが減る
・ガラスではないので、扱いやすく型出しもしやすい
冷凍庫のお世話になります
これまでは、ミニ丸型タッパーに入れて作成していたので、容器内上面の空気の層が気になり湯に沈めるのに熱湯を入れた小瓶を重石にして乗せていましたが、試験管ならサンプル上部の空気に触れる面は少ないのでフタをしていたら大丈夫だろうと思いました。
当初試験管中で攪拌もしてしまおうと計画していましたが、ミルクフォーマーは作りが雑なので回転すると軸がブレるため、試験管内部があっという間に傷だらけになることが予想されたので取りやめ、最初のステップは以前と同じ方法で行うことにしました。
今回のオイル一覧
〜去年から新しくなったオイル〜
オリーブオイル、アボカドオイル、紅花油、ココナツオイル、パーム核フレーク、ラード、シアバター、ココアバター、ひまし油、(新茶色ごま油)
後は、去年使用したサンプルと同じ(1年経ったけれど匂いでは問題ナシ)
キャノーラオイルとグレープシードオイルは先日使い切ってしまったので省略しました。
(足がはやいと思っている為あまり積極的に使わないオイルですが、前回の酸化テストの結果次第では気にせずに使えるようになるかも・・)
(期限は結構切れてるものがあるけれど、とりあえずやってみる)
それと、前回悪戦苦闘して、怪しいサンプルが3つもできてしまった「ラノリン」はパスです。(あれからカマンベール状態のカタマリが1つと怪しいキャラメル状態の物体2つのまま棚の隅で冬眠中)
実験方法
オイルを量り50℃になる様に湯煎する
水を量る
苛性ソーダを量り水に入れ振り混ぜて溶かし冷ます
オイルの温度と水の温度がそれぞれ50℃になる様にする
(この時ウォーマーに乗せているマグの湯温は52〜3℃)
双方の温度が適温になれば、オイルにソーダ液を全て入れる
カバーをして攪拌開始
ソフトオイルは2〜4分、ハードオイルはもっと早い
トレースが出たら止め、生地を試験管に移し入れる
キャップをして生地モニターを刺しこみ、湯温モニターと共にフタにつけてマグへ
モニターのスイッチを入れてスタート スマホのアプリを開けると記録開始
スタート時、湯温55℃・生地温度45℃になるように目指す
温度データは必要時にスマホ画面をキャプチャーしてデータを取る
透明化するのは生地の温度上昇ピークの前後
生地温度が湯温よりも高くなったら、いつピークが来るかと張り付いて観察
#スタート時の温度条件は実験が長くかかり過ぎると大変なので、一番時間のかかるサンプルが大体120分程で仕上がるぐらいに設定しました。
ピークが終わり、生地温度が下がって湯温と同じになれば保温スイッチを切り余熱湯煎
(上面の白い皮状に残った部分もなるべく透明になるのを待つ)
室温に出して40℃ぐらいに冷めたら冷凍庫へ
凍らせて型出し
オイル毎の透明化の経過(最初の写真順)、生地と湯温の温度変化
1 Safflower oil 紅花油 111分、77℃で透明化スタート
乳白色の生地の中央部分からクリーム色に透明化していく
左グラフの◆黄色ポイント:透明化スタート地点
右データ表の黄色:透明化スタート、全透明化
赤字:透明化スタート、ピーク温度
オレンジ:生地温度が湯温を超えた時
RT室温 Oオイル温度 L苛性ソーダ液温度 M攪拌直後の生地温度
・生地温度が湯温を超えたと思ったら透明化していた
・ピーク前に透明化
・ピーク温度は高い:84℃
2 Sweet Almond oil スイートアーモンドオイル 110分、74℃で透明化スタート
真っ白な生地がクリーム色になる 少しムラが見られる 更に透明になっていく
・紅花油と似ているが、少し遅くピーク温度も低め
・全体が透明化するのは紅花油よりも早かった
3 Avocado oil アボカドオイル 120分、80℃で透明化スタート
乳白色から黄色っぽいクリーム色、より透明に変わっていく
・透明化に一番時間がかかった ピーク温度は高く85℃
4 Olive oil オリーブオイル 88分、74℃で透明化スタート
型入れ時は黄色っぽいクリーム色 一旦白色化して固まった後、黄色っぽくなり透明になる
・ 透明化スタートは上3つに比べると早かったが、全透明化するまでにはかなりかかった
(上面の白い薄皮?部分)
・グラフの形が独特で興味深かった
5 Sesame oil cold pressed 太白胡麻油 70分、74℃で透明化スタート
白っぽくなって(薄ピンク)から透明化するとクリーム色に
・1時間強で透明化した
・全体が透明化するのも素早かった 1分!
6 Sesame oil toasted ごま油 45分、75℃で透明化スタート
ミルクコーヒーにクリームを足して混ぜたかの様 一旦白っぽくなり徐々に透明に
茶色なので透明化すると小さな泡がよく見える 短時間で上面まですっかり綺麗に透明化
・更に早く45分で透明化が始まる
・素早いのは不純物が多く含まれるせいか?
(瓶の壁に茶色いカスが散見される)
7 Macadamia nut oil マカデミアナッツオイル 88分、78℃で透明化スタート
ごく薄い赤っぽい茶色の乳白色から透明化するにつれて透き通る様な薄いクリーム色へ
・ピーク直前に透明化
(透明化を確認したら、気が抜けてうっかり観察をサボってしまった)
8 Hazelnut oil ヘーゼルナッツオイル 86分、77℃で透明化スタート
生地にムラがあり、透明化が見やすかった 白色から薄いクリーム色へ 全体が透明になるとムラは見えなくなる
・マカダミアナッツと同じぐらいの時間で透明化する
・ピーク温度はかなり高い
時々出てくるナンバー付きのグラフでわかる通り、何度も繰り返したオイルがいくつか。
実験の最初は慣れないから上手くいかないことが多いですね。
順番を逆にした方が良かったのかも。
ごま油、白と茶色では大違い。これほど違うとは思わなかったです。
後編へ続きます・・・