↑完成した石けんは約12g 上面5ミリをpHテストの為スライスした残りです
色がそれぞれ微妙に違っていて面白い
〜前編からの続き〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
9Emu oil エミュオイル 46分、74℃で透明化スタート
少し黄色っぽい乳白色から透明化すると黄色に 中心から透明化
・予想していたよりも早く透明化した
・エミュは動物脂だから、ラードと同じグループなのだと再確認しました
(マカデミアナッツなどと同じ感覚で使っていました)
10 Lard ラード 76分、77℃で透明化スタート
白色からクリーム色へ 透明化の始まりが少し分かりづらい
最後は白っぽい透明になる
・予想よりもかなり遅い 思ったよりも時間がかかった
11 Shea butter シアバター 89分、75℃で透明化スタート
これまでの実験同様、かなり注意して観察していたにも関わらず、透明化したかどうかはほとんどわからない
他のオイルと同様、白色化してから少しクリーム色に変わった段階だったと後から写真で判断(★印つき)
終わりがよくわからず湯煎を続けていたら白い斑点が現れた
・グラフでピーク確認後、写真判定でようやくわかる透明化
・見えにくい すぐに白色化する ←何かの結晶か?ステアリン酸?
12 Red Palm oil 赤パームオイル 43分、75℃で透明化スタート
少し白っぽくなり、中央部にムラ?透明な部分がポツンと見え(黒矢印の先)、そこからどんどん透明部分が広がっていった
マダラになりつつ透明になっていくが、最後は綺麗な赤いゼリーの様になる
・トレースも早かったが透明化も早い
・ピークと同時に透明化
・全透明化も早かった
13 Cocoa butter oil ココアバター 33分、72℃で透明化スタート
薄茶色の乳白色から上部のみが徐々に透明になった
下部は白っぽいまま
・初めての「ピーク後に透明化確認」パターン
・温度上昇が速すぎて、鹸化で透明化(結晶化?)するのが追いつかない感じ?
・全体がクリアーに透明化するわけではなく、スッキリしない見た目
・と言う訳で全透明化した時間は不明(と言うか、しなかったので)
14 Palm kernel oil パーム核オイル 14分、79℃で透明化スタート
側面は透明化が見えないが、上面は14分でうっすら灰色の部分が現れ、内部が透明化しているのがわかる
生地の温度上昇はとても素早く、7分でマグの湯温より高くなり、13分後にはピーク81℃
上面が盛り上がったかと思うとひび割れが(前回のシリーズではココナツオイルでこの様な現象が起きました)
・驚くほど早い反応
・急激な温度変化で表面に盛り上がりと割れ目
・ピーク直後、透明化スタート
・ピーク後の生地温度は上昇したのと同じぐらいに急下降
・約30分で全て終わった
・透明度は半透明ではあるが、白濁した感じ
15 Coconut oil ココナツオイル 22分、78℃で透明化スタート
スタートはパーム核オイルとそっくり その後一旦白くなるところまでは同じ
透明化は生地にムラができるので見やすい 最後はパーム核よりもスッキリ透明になったが上面はスッキリせず、凍った湖面に積もった雪のような風情
・こちらも早い透明化
・パーム核以上を期待してたのに あれ?
・ピークとほぼ同時に透明化
・パーム核よりも透明度が高い
16 Castor oil ひまし油 18分、71℃で透明化スタート
オイル自体粘度が高く攪拌すると瞬時にトレース、カスタードクリーム状の生地を型入れ
透明化スタートの時間はパーム核よりも遅かったが、全体があっという間に綺麗に透明化
たった6分でスッキリ透明に 上面が白く残ったりしない!
・すごい勢いで生地温度が上昇
・スタート時の生地温度の差で負けただけ?
(パーム核、ココナツに比べてマイナス4℃)
作成中に気づいたことなど
・攪拌後の生地の様子
1さらっとタイプ、2溶けかけたシャーベット状?タイプ、3・4ネットリタイプ
2の幅広く落ちて型入れしにくいタイプはナッツ系が多かったです。攪拌時間や攪拌後に容器を振り混ぜるなどでサラサラタイプに戻る事も。
ちなみに1と2は共にスイートアーモンドオイル(別日)3赤パーム油 4ひまし油
・香り
1ごま油:初めから完成した石けんまでずっと香ばしいゴマの香り
2赤パームオイル:同じくずっとほのかに人参の香り 攪拌後の生地ムラが酷い↓
(生地ムラがあるものは特にヘラでよく混ぜてから型入れ)
3ひまし油:完成後の石けんも独特の香りが残る 攪拌後はかなり生地ムラがある↓
写真にはないけれど、ココアバターもずっとほのかにチョコの香りがしました
・型出し/ 気づいたこと
ラード:3回も冷凍庫に入れた 型離れが悪い
・硬さ 完成後カット時に硬くてうまく切れず、欠けたもの 下の3つ↓
透明化時に白っぽく曇るのは何か関係があるのかな?
鹸化についての考察
これまでの経験上、鹸化に関係する主な要因はトレースと温度です。
トレース ゆるい→しっかり 早くなる
温度 低い→高い 早くなる
トレースはある程度生地の鹸化が進み、それ以上攪拌しなくても自然に鹸化反応が進んでいく段階(静置状態で)に達し、生地に粘度が出た状態だと思っています。
攪拌時にトレースが出にくいものは、たいてい鹸化も時間がかかりがちですが、それぞれのオイルでトレースの出る具合が異なるので攪拌時間を一律で「△分」と決められないのが悩ましいところです。
攪拌中の生地の感じで、「とろみがつき、表面に油が分離していなければOK」という事にしました。色々なオイルの攪拌時の様子と、植物油のゆるいトレース↓
紅花油やアボカドなどの多くの植物油は大体2〜4分、トレースの出やすい固形脂タイプは1分でも多すぎるぐらいで、40秒で止めた時にはすでにドロリとしていました。(こういう場合はフォーマーの性能が悪い方が調節しやすいですね)
鹸化反応が進むにつれて生地は発熱もするので、湯煎での加温+生地の発熱の両方が関係してきます。
マグウォーマーは一定温度で保温するタイプではなく、マグの湯温は80℃ぐらいまで徐々に温度が上がっていくため、時間がたつほどに湯温は上がり、温度が上がれば上がるほど鹸化反応も活発になり、生地の発熱も加わるので更に早くなり・・
という訳で、ある程度まできたら一気に反応が進み、急激に生地温度が上昇、ピークを迎えます。
透明化は大体その前後、鹸化しにくいオイルはピーク前に、鹸化しやすいオイルはピーク後に、見られることが多いです。
また、生地量が少なすぎて?ピークが見られないまま透明化したサンプルもあったので、ピークの有無は生地温度と生地内の未反応のアルカリ量のバランスに左右されるのかも。
こんな具合になりました↓
紅花油のサンプルを攪拌後、2つに分け、片方はすぐ湯煎、もう片方はさらに攪拌してから湯煎でテストしてみました。
トレースの程度の違いで後の反応がどう変わるかを知りたかったのですが、
・ピーク無しの透明化
・後から湯煎した攪拌長めの方が透明化が早かった!
という結果になりました。
以前オリーブ配合違いのテスト時に攪拌不足でソーダ灰の石けんができた時、ピークが早くて温度が高かったような記憶があり、どちらもあり得ると思っていました。
私の予想では、生地量を少なくすると湯温の影響を受けやすくなると考えていたので、早く温められてもっと素早く反応が終わるのでは、と思っていたけれど、今回の標準量のものよりも長く時間がかかることになったのは意外な結果でした。
2時間以上かかって70℃になったので、それまでにほとんどのアルカリ成分が反応を終わってしまって、生地の爆発的な発熱に至らなかったのでは?と思いました。
*Safflower2のサンプルは165分の観察を終えたら室温に移動させたので生地温度が下がっています
最後に今回のデータを不飽和脂肪酸のグラフと比較してみました。
上下ではなく左右の順だけを見ます。
シアバターとラードが予想よりも遅かったけれど、後はなんとなく傾向に沿っている?
使用した油の成分が使った資料のデータとマッチしていないなどの理由も考えられるので、ぴったり同じにはならないのは当然かもしれませんね。
オリーブオイルは15%エキストラバージンオイルが含まれているものなので、早いのかも。
*左表の oil & Lye mix は攪拌時間(秒)です
おまけ pHテスト
相変わらず、ココアバターだけは青みが強く、pH11〜12ぐらい?
他のサンプルは全てpH9〜10ぐらいでした。
ココアバターのpHはいつも青みが強くなるので、苛性ソーダ量を少し減らしたのですが。(鹸化率97%では1.4gの所を他の植物性オイルと同じ 1.3gにした)
ちなみに苛性ソーダ量はココナツオイルが一番多く1.8g、ついでパーム核オイルで1.7gでした。
ココアバターのサンプルは青いシミが取れない。カリカリの結晶の中に入り込んでしまった感じ。何だか色々と難ありなサンプルです。pHを他と同じ色になるように作るにはもう少し苛性ソーダ量を減らしたほうがいいのかな?
↓ココアバター(ペレットタイプ) ガッチリ固まっています プローブの穴もクッキリ
石けんの中のカリカリになった部分や上面にできたソーダ灰などは溶けにくく、酸化もしにくい、という性質をメリットとして考えると、石けんが長持ちする利点になるのか?
いや、石けんとしては少々使いづらいような気もするけれど、どうでしょう。
性質の違うたくさんのオイルを公平に比べるのは、かなり困難な作業でしたが、やり始めると熱中できて楽しかったです。