包丁の代わりにカッターナイフで切ってみたら・・・歪んだ石けんになってしまいました。
実験ばかりで、普通の石けん作りは久しぶりです。
7月の「痛みかけオイルでお茶の抗酸化テスト」の残り生地を捏ねてムース(ヘラジカ)のクッキー型で型抜き、繋げた具材で、それとあり合わせの具材で秋らしい雰囲気の石けんを作ってみました。出来立ては白かったのだけれど、なかなか作る機会を取れず2ヶ月で既にアンティークっぽく(酸化とも言う)なっています。酸化臭はあまりしません。
他の具材の色石けんもかなりの年代物から最近のものまで様々です。紅葉型は帰省時に大阪の道具屋筋 ゑびすや金物店さんで購入。(まさか石けん作りに使われるとは誰も思わないでしょうね)
よもぎ入りの、元は薄緑の石けんと赤い石けんを型抜き、スライスして重ねた長さが型の長辺になるように作ります。抜き終わった余りも捏ね直して同様に型抜き、スライス。
ムースはニホンジカとはかなり違うけれど一応シカ科なのでシカに見立て、紅葉を合わせると自然に百人一首の5番が頭に浮かんだのでその雰囲気にしました。
作り方紹介は手順の参考程度にしかなりませんが、以下の通りです。
基本的な作り方は以前の記事を参照してください。
具材
手持ちの残り具材を物色していて、夜桜石けんの月のカケラとクリーム色っぽい色石けんがあったので小さい月を作りました。手こねで形作ったのでヘンテコです。
具材の用意ができたら具材総重量を量り、必要な生地量を割り出してレシピを作ります。
トッピングには余りの紅葉スライス(ダイソーのカラフルなアイシャドーで発色テストしたときの残り)や、ミニの葉っぱ型に抜いたものなど。(トッピング用にとダイソーのシリコンの星型製氷皿?にあまり生地を入れて作った星石けんスライスも用意したけれど結局使わず)
ヘーゼルナッツオイル とマカデミアナッツオイルを半量づつ、それにココナツ、ラードを加えて泡立ち、固さを、ひまし油(キャスターオイル)で泡持ちを出します。
ひまし油は沢山入れると泡立ちが悪くなるので大抵はオイル総量の5%ぐらいにしています。
生地レシピ ダイソータッパー750ml(写真左手前のオレンジのフタの)
生地量 740gー290g(具材総量)=450g 後述の散らし具材も入れるので410g作成
ムース具材の年季の入った色合いに合わせて渋い感じの色合いでまとめます。
カットした時に見えやすくなるよう、背景生地には細かくしたカケラ石けんを混ぜ込んで散らしにしたり、色生地にしたりしてみました。
散らし具材(生地に混ぜ込む背景用、下から)
・散らし具材分量は黒粉状15g、緑10g、黄色5g、赤7gで合計37g
・トッピングは分量外(量るべきかな?)
作り方
苛性ソーダ液は作って冷ます
オイルを量って溶かし、ブレンダーで空回しして空気を抜いておく
苛性ソーダ液をオイルに加える(写真1)
ブレンダーを断続使用でライトトレースまで混ぜる
香料を入れて軽くミックスして生地を仕上げる
100g別容器に移す
1段目の具材を加えて混ぜ、型入れ
(不精して赤紅葉を入れたまま型入れしたら生地が偏りました)
全体に行き渡ったらムースを乗せる
下側の足の間に空気が入りやすいが完成後、補修できるので大丈夫
120g別容器に移す
2段目の具材を加えて混ぜ、なるべく隙間ができないように型入れする
残り生地(約180g)に赤パームオイルを1g加えて黄色に色付けしてみた
具材も加えて混ぜ、型入れ
バターナイフでムースを動かして白紅葉具材を入れるスペースを開けた
白紅葉具材を押し込んで、表面を整えトッピング 7切れにカットするので位置を考えて
フタをして(温度計をセットして)炊飯器にいれ水を100mlぐらい加える
具材が邪魔でモニター温度計を斜めに刺せなかったため、高さがあってフタが閉まらず
仮フタ(電子レンジ用ドームフタ)を被せて 保温スイッチオン
スタート時の温度 生地温度は設定をマカデミアナッツのピーク温度(72℃)に合わせてみました 該当温度になればアラームが鳴ります
しばらくして、忘れ物に気づく! 月が残ってるし。ナンテコトダ!!
型を取り出してトッピングをずらし、月具材を埋め込み再度保温スタート・・
ちゃんとフタをしていないので保温力が弱いらしく、全然設定温度まで上がらず
3時間でようやく下の方が透明になった 生地温度は釜内部温度とほぼ同じ63℃
3時間半でほぼ透明 結局生地温度は最高66℃だった
室温で30℃ぐらいまで冷まし、冷凍庫に入れて数時間後に型出し
包丁でなくカッターナイフで初めてカットしてみた
長さが足りず、手前と向こう側と2回ナイフを入れる
ぱっと見均等に切れていい感じに見えたのですが手に取ると湾曲したすごい形でした
カット直後 ムースのお腹あたりに穴が空いているものがいくつか
上部のプローブの痕(2ヶ所)と共にヘリを削った屑で色を合わせて補修
カット面が湾曲しているのでスタンプできるか心配でしたが無事に完成
ぱっと見では普通に見えるかもしれませんが、罫線入り台に置くとグニャグニャぶりが明らか
pHテスト
水洗いした後一晩乾燥した石けんの上面、カット面を数カ所調べます。
どこもpH9ぐらいでした。
スチーム作成時の生地温度変化
いつものようにピークが出ると思っていて、モニター温度計を72℃に設定したのでアラームが鳴るまで安心して他の作業をしていたのですが、何時迄も鳴らない。温度上昇が遅い。
結局かなり低温で透明化したのでした。
温度が低かったのは多分
・炊飯器のフタを閉めなかったので保温力が弱かった
・具材が多かったので生地の発熱が少なかった
・初めのプチトラブルで少し遅くなった
などが原因だと思います。
こんなに長時間、炊飯器スチームをしたことがなかったので型に水を入れて、再度スタンダードのテストをしました。中敷なしでぬるま湯を入れた型と水100mlを入れ、フタをして4時間 (closed)。フタを開けたまま、仮フタ (with lid)で6時間の温度変化を観察しました。
生地の代わりに水(34℃のぬるま湯)を入れ、いつもと同様に型の2ヶ所にモニター温度計を刺し、型の上にも1つ乗せて釜内部の温度を測ります。
・フタをするいつもの方法:
2時間で釜内部温度は80℃を超えその後80℃で安定
型内部の水温は70℃で安定
・フタは開け、仮フタで保温:
3時間で釜内部温度、型内部の水温が全て同じになる
3時間半で型内部の水温の方が高くなる
5時間で型内部の水温は70℃で安定
釜内部(型の上)温度は65℃で安定
→上部から熱が逃げるのでこの温度になるらしい
実際に生地を入れたら、生地自体の発熱があるのでより高めの温度になるので、2時間以内に透明化が終わる。というのがこれまでのいつもの流れでした。
今回の低温で透明化はその倍ぐらいの4時間ほどもかかったのですが、お湯でも生地でも同じぐらい長時間かかっています。
温度上昇がゆっくりだと本当の透明化ポイント温度がわかるのかもしれません。
感想
今まで、75℃保温で2時間程度で終了だったのが、60℃少々で4時間弱と2倍の時間がかかったのは新鮮な驚きでした。
低温だとちゃんと透明にならなかったりするオリーブ油+カレンデュラの組み合わせでも有効なのか気になりました。
より低温で透明になる方がよく言われる「熱による変色」などを防げるのでいいような気がしますが、そもそも熱による影響って何かあったかな?とちょっと思いつかない私。
普段から高温で作成しているため自覚がないのかも。
加熱すると酸化しやすい、と言われていますが、私の経験では加熱作成の石けんよりも室温作成の石けんの方が酸化しやすいです。
多分、加熱作成の方が鹸化反応がしっかり行われるので未反応の油脂量が少なくなるからではないかと思います。確かに普通であればそうなのですが、場合によってはそうではない様です
追記:後日、前回のラベンダー石けんその1で劣化油と高温作成による異常に早い酸化を経験しました。次の記事の最後に書いています。
石けんのデザインの反省点
色々考えて作ってみたけれど完成して眺めたら思ったよりもモチーフが目立たなかった。
今回の色あせた、ぼーっとした水彩画風なのもそれなりにいいけれど、より引き立たせるためには具材に濃いめの色粉を直接まぶしつけて輪郭を出す方法もあります。
追記:キッチンで使用、使い終わった感想です。溶けやすく、泡立ちよく、優しい使い心地。紅葉部分とムース部分が溶けやすく、ムース部分は琥珀色の半透明になって綺麗でした。2021 1月
中央の物体を鹿とするのは少々難ありで・・・謎の動物になってますね